金融・経済

経済メカニズムを巡る論点対立
VOL.2 景気拡大は株高か、それとも株安なのか?
金融データシステム 角川総一

■イントロ■

一般に景気拡大を示すデータが発表されれば株価は上がるもの。教科書にはそうあります。しかし、2月2日の米国において、この常識はものの見事に裏切られました。
この日発表された米雇用データにおいて、雇用者数が前月比で+20万人、賃金が前年比で+2.9%というとても高い数字が明らかになったのです。つまり、景気は予想以上に良いことが示されたにもかかわらず、その後の株価は急落しました。

■旧来の解釈A■

「景気拡大」⇒「企業業績が拡大している」⇒「それを見越して株価は上がる」。これが基本です。これは説明しようがないくらい自明の理屈だと多くの人は思っておられるはずです。
特に米国においては、わが国以上にこの「雇用者数の前月比での増減データ」が重要視されます。これは、米国ではわが国以上に経済政策の目標として「雇用情勢の好転」が重視されているからです。経済政策は国民の豊かさを増すものであり、それを最も忠実に映し出すのが「雇用関連データ」だと考えられているからです。
ちなみに、「米国で雇用情勢について取材するには、労働省ではなくFRBへ行け」とされるくらい、FRBが金融政策を決めるうえで重要な指針としているのが雇用情勢なのです。

■対立する新解釈B■

でも、実際にはそうではなかった。実は、これは2月2日に始まったことではなく、数年前から米国ではこのように「景気良好」⇒「株価下落」といった現象が散発的に起きていたのです。今回ほど極端な形ではなかったので、気づいた方は多くなかったと思いますが…。
理由の1つは、景気が良いことで、金融が引き締められるのではないか、との予想を多くの人に抱かせたことです。つまり、「これだけ(予想以上に)景気が良いのだから、FRB(米中央銀行)は現在進めている利上げのピッチを速めるかもしれないな」と考える人が増えたのです。
「その証拠に、この日は将来の政策金利の動きを織り込んだ長期国債利回りがピクンと上がったでしょう」というわけです。実際この日は10年長期国債利回りが前日の2.79%から2.84%に上がっています。
つまり、ここでは景気が良いということによって「金融政策において利上げピッチが速まる」⇒「企業業績の拡大・収益増加の腰を折る」というリスクが意識されたというわけです。
これは言い換えれば、「それだけ現在のマーケットは金融政策次第」=「金融政策に負っている」とみなすことができるのです。
過去6年にわたりNYダウが1万ドル割れから2万6,000ドル台まで上げてきたのが、2008年11月の過去に例を見ない強力な金融緩和策に依っていたのであれば、その歯車が逆転するのはごく自然な成り行きなのです。