ブックタイトル【試し読み】Financial Adviser 2017年4月号

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概要

【試し読み】Financial Adviser 2017年4月号

%)まで下がることとなる。さらに、D)母の「葬儀費用等」は債務控除可能である。E)1人暮らしの母の生活費や医療費として、今後も財産が減っていく。F)老人ホームの入所費用として使われるかもしれない。G)将来、どちらかの子が母と実家で同居すれば、「小規模宅地等の特例」が受けられ、自宅土地の評価が8割減となる。 これらを考えると、実際に相続が発生した場合の財産評価額は、基礎控除額4200万円に限りなく近づくのではないだろうか。「教育資金の一括贈与」が長女の子2人だけになってしまう不公平はあるが、当事者が事情を理解し、それを踏まえて遺産分割を話し合うなら大きな障害にならないだろう。目先の節税対策は最終的に子世代へのツケとなる 総務省の発表によると、2013年の空き家の数は820万戸と、この20年間で1・8倍に増えている。これは、東京都の世帯数約680万を大きく超える数であり、いかに空き家の数が多いかわかるだろう。 さらに、野村総合研究所の試算によれば、2033年の空き家数は今の2・6倍に増え、空き家率は30・4%まで上昇すると予測されている。 また、国立社会保障・人口問題研究所の試算によれば、2015年の日本の人口約1億2700万人が、2060年には約8700万人まで減ると予測されている。これは、「今後45年で人口が3分の2に減る」ことを意味している。 このような状況下、目先の節税としてのアパート経営は、最終的に子世代へツケを押し付ける形にならないだろうか。親子でもっと真剣に話し合うべきだと思う。 また、サブリース会社は営利企業であり、赤字を出してまでオーナーを支えるわけではない。入居者の確保は、そのエリアにおける人口動態に大きく左右される。賃料相場は市場に委ねられており、人気の物件の賃料は上がり、人気がない物件の賃料は下がっていく。 正に「需要」と「供給」の関係であり、そのリスクはすべてオーナーが背負っていることを認識すべきだ。 また、連帯保証人は主たる債務者(この事例の場合は母)と同列、ほぼイコールと考えてもらって差し支えない。母の返済能力の有無にかかわらず、銀行はいつでも連帯保証人に返済を請求することができる。 今回のアパート建築により、母は裕福だった暮らしが一変し、親の相続財産を期待していた子は自分たちのお金を借入金返済に使わざるを得ず、孫世代の生活や教育にも悪影響が出てしまった。 誰が得をし、誰が損をしたのか、考えさせられる事例である。①相続対策は、現状をしっかり把握してから行うべき②アパート経営は「事業」であり、様々なリスクが伴うことを理解しよう③アパート(収益物件)より更地のほうが高く売れる可能性が高い④連帯保証人は相続放棄に支障をきたすその相続案件、大丈夫?吉澤諭●よしざわ・さとし住友信託銀行、独立系財産コンサルティング会社、あおぞら銀行を経て2014年4月に㈱吉澤相続事務所を設立。「日本一予約の取れない相続コンサルタント」として、“答えを出す”をモットーに、「セミナー・研修事業」と「相続コンサルティング事業」を両輪に活動中。1級ファイナンシャル・プランニング技能士、社会保険労務士、宅地建物取引士、相続診断士。https://yoshizawafp.co.jp/本事例から学ぶ教 訓Financial Adviser 086