ブックタイトル【試し読み】Financial Adviser 2017年4月号

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概要

【試し読み】Financial Adviser 2017年4月号

トラブルの経緯 地方で暮らす母が、相続対策(図表1)として資産を取り崩したうえで銀行から借入れも行いアパートを3棟建築したが(図表2)、サブリース賃料の引下げが止まらず、アパート経営の先行きが暗いと売却を検討するも、借入金残高以上で売却する見通しが立たず、問題を先送りしたままアパート経営を続けていた。 その後母が死亡し、借入金が多額だったため相続税はかからなかったが、時価ベースでは債務超過だったため、相続人は相続を放棄するつもりでいた。ところが、母が銀行から借入れした際に、相続人である子2人が共に連帯保証人になっている事実が判明した。 この状態で相続を放棄しても、子は借金の返済から逃れられないため、仕方なくすべての財産を相続したが、入居者の確保がさらに難しくなり、アパート経営が行き詰まった。母から相続した財産に加え、相続人固有の財産を返済に回してもなお残った借入金の処理について、銀行と再建計画を話し合うことになってしまった。どうすれば 良かったのか 相続対策としてアパート経営をするのであれば、現状把握をしっかり行い、相続税がかかるかどうか、かかるとしたらどの程度かかるのかを把握すべきであった。 アパートを建築する前の母の相続税評価額は1億円(図表3)、相続人は子2人なので、相続税は770万円(実効税率7・7%)であり、母名義の定期預金6000万円で十分納税が可能であった。相続税が心配であれば、生命保険の非課税枠の活用や生前贈与等で節税可能だったと思われる。 また、分割しにくいアパートを建築してしまったため、かえって遺産分割に支障が出てしまい、遺産分割対策としても逆効果であった。 アパート経営は不動産賃貸事業であり、事業にリスクはつきものだ。特に、アパート経営の一番のリスクは「安定的に入居者を確保し続けられるか」であり、市場調査や将来見通しも甘かったと言わざるを得ない。相続対策を目的とするなら、税金だけではなく分割や納税まで視野に入れ、相続全般に目利きのできる第三者たる専門家に相談すべきであった。その相続案件、大丈夫?  ■~トラブル事例から学ぶ、もめない遺し方~アパート2号棟建築工事費1億5,000万円(3棟合計)銀行から借入れ9,000万円サブリース(一括借上げ)20年アパート1号棟アパート3号棟長男56歳東京居住×妻 (被相続人)母82歳東北居住子28歳子25歳長女52歳東京居住夫 子18歳子17歳〈図表2〉アパート概要 〈図表1〉親族関係図『相続対策としてアパートを建築したが、最終的にすべての財産を失うことになってしまった』01今回のトラブルFinancial Adviser 084