金融・経済

経済メカニズムを巡る論点対立
VOL.3 ドル金利上昇はドル高? それともドル安?
金融データシステム 角川総一

■イントロ■

一般に金利が上がれば、その国の通貨(為替相場)も上がるものです。日米金利差とドル円相場の関係も近年ではきれいに連動してきました。多くの報道でも、ドル円相場が変動したときには、少なくとも3~4割の頻度で「米金利の上昇によりドル高」といった説明がされていました。
しかし、今年は年初から米金利が上昇しているにもかかわらず、ドル安・円高が進行しています。なぜでしょう。

■旧来の解釈A■

「金利差が為替相場を決める」という考え方は、「高い金利にお金が集まる」というリクツと同じです。すなわち「高金利=収益性が高い」ということです。これは直感的に理解できることでしょう。しかし、今年はこうした常識を否定するような動きとなっています。
10年国債利回りで昨年末と今年2月末を比較してみましょう。日本の10年利回りは0.045%で変わらず、米国の10年債は2.40%から2.86%まで上昇。この間に日米の金利差は2.355%から2.815%に拡大しています。一方、ドル円相場は112円64銭から107円07銭まで一気に円高が進んだのです(これは近代セールス社WEBコラムのマーケットデータでも確認できます)。
「金利差拡大」⇒「ドル高・円安」というリクツは完全に裏切られたのです。

■対立する新解釈B■

その昔「良い円高、悪い円高」といったフレーズが流行ったことがあります。表面的には同じ現象であっても、プラスに評価できるケースとマイナス評価になるケースがある、というのです。今回の「米金利高⇒ドル安」はどうか?
今回、ドル金利が上昇したのは、トランプ政権による大型減税と巨額のインフラ投資という経済政策が原因となったと考えられます。
トランプ政権のもとで、法人税を35%から21%に引き下げるという大型減税が決まり、10年間で1.7兆ドルというインフラ投資の方針が打ち出されました。減税で歳入が減る一方、インフラ投資のために歳出は膨れ上がるわけですから、これらを実現するためには国債の大量発行による資金調達が前提になります。国債が大量に発行されれば米国の金利が上がるのは当たり前です。
つまり「金利上昇は米国政府の財政逼迫を意味する」⇒「これは米国の経済にとってはマイナス」⇒「そこでドル安が進んだ」と解釈できます。今回の金利上昇を「悪い金利上昇」と為替市場は受け取ったのです。
では、通貨高を促す「良い金利上昇」とは何でしょう。その代表は景気拡大であり、その兆候としての物価上昇です。これらを背景にした金利上昇だと金利高⇒通貨高となるのが基本なのです。
同じ金利上昇という現象であっても、その背景がまったく異なるときには、その現象がもたらす影響はまったく逆になるということの典型的な例だとみていいでしょう。